狂気従容

軍事、歴史、宗教などを語ります。

東京七輪ピックになるのか

2月の自殺者数が、昨年比で11%増加した。2月は年間でみると自殺者が少ない月である。前にも記事にしたが、自殺者が増加するのは3~5月。5月までがまず勝負である。

 

昨年は、11年ぶりに自殺者数が増加した。特に未成年者と女性の自殺者が増加してしまった。コロナ禍を引き金に、日本社会の歪があらわになったのだと考えられる。

 

全数として男性の方が自殺者数が多いのは変わらないが、女性の自殺者が増加したのは、経済的安定性など一定条件において、女性が日本における弱者に該当するからだろう。

 

未成年者においては、経済的な問題だけでなく、「ステイホーム」による家庭内ストレスの増加が指摘されている。私も体験者だからわかるが、家族や家が、誰にとっても居心地の良い場所ではないのである。

 

このまま状況が改善されなければ、3月の自殺者数も昨年比で増加するのではないかと思われる。緊急事態宣言が終了し、ワクチン接種が順調に進み、ある程度もとの生活に戻ることが出来れば改善するだろうが、わからない。

 

コロナ禍で増加した失業者が復職し、生活を取り戻していくのは、大変な苦労だと思う。

 

無職時代の経験から話させてもらうと、これといったスキルやキャリアを持っていないある程度歳のいった無職者が、安定した職に就くのは本当に難しい。

 

コロナ禍においては、特定業界全体(旅行とか)が冷え込んでいるのだから、コロナの影響で失職した時に、同一業界内で経験を生かしての再就職は困難だろう。

 

女性の場合、非正規雇用の割合が男性に比べ高く、もともと不安定な雇用条件で生きているだけに、景気の悪いときに復職するのは特に大変だろうと推測する。

 

このタイミングで就活をしている若年層にとっても、大きな問題である。氷河期世代の例を見ればわかるが、まだまだ新卒採用の傾向が強い日本にあって、就職の年につまづくと、その後何年もハンデを背負うことになる。

 

不登校や引きこもりの未成年層にも影響を与えるだろう。子供時代にレールから外れると、社会復帰のハードルが高くなるのは今に始まった話ではない。10年勤務、20年勤務の無職者が復職に苦しむ不景気の時ならばなおさらである。

 

経済対策で見かけの数字を一時的に改善することは可能かもしれないが、10年、20年後も安定して生活していけるように雇用条件を改善していくことは可能なのだろうか。

 

近年、先進国全般で自殺者は減少傾向にあったが(例外はアメリカ……)、ここで有効な対策を打たなければ、数年単位で自殺者を増加させることにもなりかねない。求人数を増やしても、それが未来につながる職場でなければ、自殺を数年後に延長させるだけである。

 

東京五輪どころでは無い。東京七輪になってしまう。ドン詰まりの真っ暗闇、少しでも希望が視界に入らなければ、見えてくるのはロープや七輪である。あるいは拡大自殺としてのテロである。

 

小手先の経済対策で雇用を確保しても、「何とか生きていけるけど、薄給激務で結婚も出産も無理、働けなくなるまで働いて孤独死を待つだけ」という未来絵図では、遠からず破綻する。

 

給付金とか税金の特例レベルでなく、これまで積み上げてしまった、日本社会の矛盾や格差に切り込む勢いで取り組まなければ、大きな惨劇となるだろう。