狂気従容

軍事、歴史、宗教などを語ります。

大学時代の与太話。あるいは、ホラ話。

これは完全な与太話。あるいは、ホラ話かもしれない。

 

2007年の冬、私は完全に病んでいた。自分の中に貯めこんでいた諸々の不具合が爆発し、大学を半年近く休み(勝手に休み)、留年するところだった。人生お先真っ暗になったタイミングは何度かあるが、あれが1回目だった。

 

私は、希死念慮の波と自分が何者であるかわからない不安に倒れていた。学生時代だから許されたのだろう、就職していたらきっとクビになっていたし、そこで死んでいたような気がする。

 

毎日、夕方の4時くらいに目を覚まし、タバコを吸いながらYoutubeニコニコ動画を見て、カロリーに溢れた食事を貪って、朝の6時くらいに寝るという、およそ健康とはかけ離れた生活をしていた。半年で30Kgくらい太った。

 

あれは、留年が確定するかどうかを聞きに行った日か、まだギリギリ大丈夫だからと何とか復学した後だったか、大学の喫煙所で聞いた話である。

 

話をしたのは2歳年上の先輩で(仮にMさんとする)、喫煙所で話すうちに知り合いになった、タバコ仲間であった。今ではそういう付き合いも難しい(いや、健康的な付き合いがあればいいと思うが)。

 

話かけてきたのは、Mさんの方だった。その時の会話を、記憶の限り再現すると以下のようになる。繰り返しになるけれど、与太話。あるいは、ホラ話かもしれない。

 

Mさん「最近見なかったけど、どうした?」
私「いやちょっと、体調崩してまして、駄目になっていました」
Mさん「そっかぁ、俺もそんな時あったよ(Mさんは半年留年していた)。ところでさぁ、ちょっとおもしろい話聞く?」
私「ええ、聞きます」
Mさん「Salem君さぁ、エシュロンってわかる?」
私「エシュロンですか?知ってますよ。あれですよね、世界的な監視システムの、日本にも米軍関係で施設がありましたよね?」
Mさん「そうそれ。やっぱり知ってたか。流石だよ。俺の仲間が、エシュロンを盗聴してさ、でもバレちゃって大変なんだ」


!!!!私は、最初、この人は何を突然話し出すのかと思った。エシュロンを盗聴。んなことできるんかいな、と。だが病んでいた私は、深く考えることなく、Mさんの話を聞き続けた。


私「Mさん、何をいきなり話始めるんです?」
Mさん「俺さぁ、興信所とか、そういう関係の仕事手伝っててさ。正確に言うならば、俺の友人が主体って言うか主犯だけど」
私「はぁ」
Mさん「まぁ、エシュロンの件は、ほんの些細な話だから、そこまで大事にはならないともうけんどね」
私「そうですか……」
Mさん「中学生とかの時さ、職業体験とかそういうのあるじゃん?俺達、面白そうだからって、興信所を選んだんだよ。それが始まりでさ、子供って何かと便利なんだよね、そういうことするとき。仲間の一人が親居なくてさ、尚更動きやすくて。それ以来、そういう縁ができたんだ」
私「Mさんも何かするんですか?」
Mさん「俺はPC関係だよ。普通のパソコンじゃない。そういう仕事してる場所には、すごい設備があるんだ。CPUは普通じゃないし、HDDも数百TBだ。」


正直、当時の技術で数百TBのHDDなんて無理だろうと思う。もっとも、1台でって意味でなければ、何か手立てがあったのかもしれないが。


私「そんなことあるんです?」
Mさん「そういう機材があるんだよ。でも、本当にすごいのは、ネットさ。Salem君さ、ブラウザは何使う人?」
私「Firefoxです」
Mさん「Firefox派か。どんなことする?」
私「Youtubeニコニコ動画見るくらいですかね」
Mさん「2chとかいく?ファイル共有とかは?」
私「ファイル共有はやらないです。2chは、たまーに見ますかね」
Mさん「検索エンジンは?」
私「基本Googleです。Yahooは使わないですね。」
Mさん「そうなんだ。2chたまに見るんだ。アングラ系とか好きな人?」
私「ちょっと興味はありますかね」
Mさん「昔に比べ、だいぶ消えたよね。隠しサイトのリンク先とか、探したことあるでしょ?白黒反転とか、ページ情報の中とかさ。」
私「ええまぁ」
Mさん「Salem君さ、検索エンジンに引っかからない、というか、そもそもIEFirefoxだとつながらないネットってあるんだよね。知っている?」
私「どういう意味です?」
Mさん「普通には見ることが出来ないってこと。専用のブラウザが必要だし、アクセス先の情報、アドレスも限られた人しか知らない。普通のブラウザ、検索エンジンだと、たどり着けないってこと」
私「それは何の役に立つんです?何するんです?」
Mさん「まぁあれだ、見つかっちゃダメな理由がある場合さ。そういうところでやり取りするんだ。俺は普通に就職して、普通の人生歩みたいから、足あらうけどね。今は引継ぎ中さ。1人は完全にそっちに行っちゃったけど、俺は駄目だなぁ」

 

その後は、どんな業界に行きたいか、就活どうするかとか普通の会話をして席をたった。

 

Mさんは半年後に卒業した。その後、特に交流もなかった。喫煙所であった時に、何度か話をしたかな。普通の会話だったと思う。こうやって文字化すると、本当に適当なつくり話だったような気がしてくる。エシュロンを盗聴ってのは、ちょっと考えられない。

 

どうにか前向きに考えれば、在日米軍関係者が出入りする飲食店にでも、盗聴器を仕掛けたのかもしれない。まぁ、Mさんのつくり話の可能性の方が高いが。

 

ただ気になるのは、ネットの話だ。Mさんが話していた、「検索エンジンに引っかからないIEFirefoxだとつながらない」というのは、今でいうところのダークウェブのことだろう。2007年当時、ダークウェブという単語はメジャーではなかったし、表立って話題になることも無かったと思う。

 

2000年代前半には環境が整備されていたのかもしれないが、Silk Roadの開設が2011年ってことを考えると、かなり早い。日本には日本の、ひっそりとした、知られていない場所があったのだろうか。Mさんの話が本当だとしたら、「本当にそっち系の話をしていた」のかもしれない。まぁ、分からないけれど。

 

エシュロンの件がぶっ飛んだ話だったんで、眉唾もんだと思っていたが、ダークウェブの話を知ってからは、ちょっと気になっていた。記事にしたのは、病み始めて大学に行けなくなったことを思い出したからだ。春、いい思い出がない。

 

あるいは、元気を無くして駄目になっていた私の為に、Mさんが即席で面白い話を提供してくれたのかもしれない。なんでまぁ、与太話。あるいは、ホラ話だと思ってほしい。