私はブラックユーモアが好きだ。風刺とか皮肉の類が大好きだ。不謹慎なジョークが大好きである。だが嗜み方として、発言を聞いて傷つく人がその場に居ないことが条件になると思っている。事実上、誰もが閲覧できる現在のWEB世界においては、ブラックユーモアの出番は制限されるものだろう。
ここまでネットが普及した現在においては、対面での仲間内でないと話せないことが多くなったように思う。Twitterの様な、それこそ多くの人が目にする場所では、発言に注意を要する。今でも、一部の人しか閲覧しないようなコアなあるいは日陰な場所(マイナーな掲示板とか)では、黒いインターネットが残っているが、一度注目されれば消えるだろうか。
私には、数は少ないけれど友人が何人かいる。似たような境遇というか、はぐれ者揃いだ。だからだろうか、仲間内での会話は色々と酷い。とてもオープンスペースでは披露できないような風刺や皮肉が飛び交う。しかしそこには、特に明文化されたわけでも、約束したわけでもないが、ルールがある。お互いが不愉快にならないということだ。要は、友人を傷つけない。
友人の一人は兄弟が障害者だ。だから障害者をネタにすることは決して無い。勿論、そいつの兄弟が健常者でもネタにしないだろうが。私が創価学会なもんで、宗教ネタは避けてくれている。配慮されているのが伝わってくる。LGBTQをネタにすることもない。各々の友人にLGBTQの方がいるからだ。もしかしたら、仲間内にもいるかもしれない。
全員独身でモテない人生を歩んできたので、非モテの話は自虐にしかならない。ミソジニー的な話もでない。そもそも仕事以外で女性と縁のない連中の集まりだから、女性の話題が出ない(笑)。庶民が車を購入する時に、コルベットとかブガティが話題にならないように、私達の間では、そもそも女性の話題がでない。サブカル好き(マニアックな趣味)が集まっているので、他人の趣味を悪く言うことも無い。
では何が酷いかというと、エスニックジョーク、人種ネタ、政治歴史ネタである。SNSでやったら即垢バン間違いなしである。
まぁ何が言いたいかというと、その場に傷つく奴がいなければ、不謹慎なユーモアも許されるだろうということだ。あと、リスクや社会的な評価を気にせず、自由に発言できる場所を確保しようねって話だ。公共の場における差別発言を取り締まるのは当然だと思うが、それで差別が減っているのかと言えば疑わしいし。機能としての差別や不具合を根絶することは、困難にしろそれなりに手立てがあると思うが、相手の心根までかえるというのならば、薬物や外科治療が必要だろう。遺伝子改良と幼少期からの集団教育(洗脳)も必要かもしれない。私はとりあえず、機能としての差別や不具合を解消できればそれでいいんじゃないかと思っている。
ネット上で健全な人物が、現実世界でも健全ならば最高なんだが、実態は周辺の人にしかわからないだろう。逆もしかり。現実世界では「まともな人」が、SNS上では酷い暴言を吐くこともある。両方駄目な人は論外として、言論の露出度とそこからくる評価が、その人となりを現しているかと言えば違うだろう。様々な努力の成果から、インターネットは奇麗になったと思うし、差別や社会矛盾に対して声を上げやすくなったとも思う。それは歓迎すべきことなんだが、現実は良くなったのか判断に苦しむ。
結局のところ、現実世界において自由な発言を担保出来ていないのだろう。職場で、社会問題や政治政策に関する議論をノーリスクで実施できるか?と聞かれて「我が社は大丈夫です」と返答できるだろうか。どこからでも誰もが通報できるネット空間よりも、立場や空気でマウントをとれる現実世界の方が、ハラスメントや差別発言が蔓延っていないだろうか。
現実社会に代わる自由な(素直な)発言空間としてインターネットに活路を見出してきた層というのは、主義主張の方向性に関わらず一定数存在する。ところが、ネット空間があまりにも現実になったおかげで、最後の隠れ家を失った。この先、現実世界及びネットにおいて本心を言えない層がどうなるのかは分からない。ただ、逃げ場所が無いというのは危険なことだと思う。発言の内容や方向性以上に、発言の場がないというのは危険なんじゃないかなって。
米国大統領選前後で、保守系があつまるSNSの存在が話題になったが、同根が集うサービス(要はサロンだ)というのはこれから一定の支持を集めるかもしれない。それはネット空間の分断を意味するわけだが(もっとも今だって興味のないエリアは閲覧しないが)、どうだろう。あるいはリアル回帰路線で、マニアックな少数オフ会が再興するか。折衷案でVRミーティングか(VR空間の規制はまだ緩いと思う)。それとも専用ブラウザと暗号通信か。
現実世界はもちろん、インターネット空間にすら居場所を見出せなくなった時、人はどういう行動にでるだろうか。ジョークやユーモアでは済まないと思うんだ。