狂気従容

軍事、歴史、宗教などを語ります。

GutsProject有限会社の謎(公明党の報告書より)

 旧統一教会関係の話題が創価学会に若干飛び火している感がある。創価学会に限らず、多くの宗教団体が収支計算書を公開していない以上、公的情報から客観的な分析批評を行うのは困難である。文化庁が宗教団体の情報開示を拒否することについて、以下の証言がある。

 

文化庁が宗教法人と交わした「裏約束」の正体 | 宗教を問う | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

 

 自公連立に配慮して情報開示をしないという、当時の担当官僚(宗務課長)だった元文部科学事務次官 前川喜平氏の発言は大きな意味を持つだろう。前川氏は、旧統一教会関係の資料が出てこない理由を、安易な情報公開は”他の宗教団体”の反発を招くのでそれを恐れてのことではないかと推測している。上記記事から以下引用する。

 

「情報公開法以外でも宗教関係者に根回しする一環として、信濃町創価学会本部に何度か足を運んで説明した。創価学会秋谷栄之助前会長とも1回か2回、赤坂の料亭で与謝野さんと一緒に食事をしたことがある。」

「与謝野さんからの秘密指令を受けて、とにかく仲よくした。「雨が降ろうと槍が降ろうと、自民党の大物政治家が文句を言ってきても、提出された書類は絶対に出しません」と。そうやって創価学会公明党から信用してもらった。」

 

デマや脚色の類ならば、創価学会的には看過してはいけないと思うがどうだろうか。

 

 さて、公開情報が碌にないのでまともな議論を展開し難いのは事実だが、出来るだけ公開情報にあたることを信条にしている私としては、思いつく限りの努力をしなければならない。思案した後に考えついたのは、創価学会の収支計算は把握できなくても、公明党の収支報告書は調べられるだろうということだった。政党であるならば、収支報告書を公表しなければならないので、誰もが閲覧できる状態になっている。そこで、とりあえず公明党の収支報告書を調べることにした。

 

 政党の収支報告書は、総務省がHPで公表している。リンク先は以下の通りである。

 

総務省|政治資金収支報告書及び政党交付金使途等報告書

 

 政党交付金は税金である。各党が独自に得た収益による支出とは別に、政党交付金使途等報告書として公表されている。基本的に、ここにヤバイモノは乗っからない。突っつかれて面倒なものを税金で支払う程、国政政党は間抜けではない……と思いたい。政治資金収支報告書には、パーティーや刊行物、寄付金等の税金以外の金銭の使い道も記載されている。

 

総務省|政党交付金使途等報告書|令和4年9月30日公表(令和3年分 定期公表)|政党本部|公明党

総務省|政治資金収支報告書|令和4年11月25日公表(令和3年分 定期公表)|政党本部|公明党

 

 上記リンク先は、公明党(令和3年分)の報告書記載ページである。見比べてみると、中々に興味深いことが分かる。先に断っておくと、スキャンダラスな内容ではない。支払先が純粋に面白いということだ。

 

1. 税金を外郭団体には使わない

 政党交付金の報告書には見当たらないけれども(令和3年分 定期公表)、政治資金収支報告書には、創価学会の外郭団体企業の名前を見つけることが出来る。わかりやすいのが日本図書輸送株式会社だ。宣伝カー運行諸経費という内訳もある。日本図書輸送は「何でも屋」というイメージが私の中にある。学会とのつながりの深い企業の方が、何かと便利なこともあるのだろう。さくらサービスや東弘、日光警備保障も確認できる(政党交付金の報告書には見当たらない)。交付金を使わないのは、「税金が学会に投入されている」という批判を避けるためだろうか。

 

2.大手広告通信社

 公明党のPR業務を引き受けている企業の中で、一番目立つのが大手広告通信社だ。ラジオ・ネット広告、調査・研究費など、公明党のイメージ戦略を委託されている。大手広告のHPを見てみると、主な取引先に創価学会聖教新聞社の名前が確認できる。

 

企業案内 | 大手広告

 

 外郭団体以外で、取引先名に創価学会を明示するのは珍しいと思う。ちなみにであるが、聖教新聞社は社とついているが、独立した会社ではない。

 

3.印刷は株式会社ホクトエンジニアリング

 パンフレット等を印刷している主要企業は、株式会社ホクトエンジニアリングという会社らしい。令和3年度の支払額を見てみると、額の大きいものを合計して2億3千万円程度になる。令和3年度の公明党政党交付金が約30億ということを考えれば、1社でかなりの部分を占めている。

 

 調べてみたけれども、会社のHPが見当たらない。国政政党の印刷物を委託されているのだから、信用されている会社だとは思うけれど、あまりオープンにはされていないようだ。知る人ぞ知るタイプの企業なのかもしれない。あるいは、完全に身内企業なのかもしれない。斜に構えて否定的な見解を探せば、OBの天下り先という仮説を立てることも可能かもしれないが、情報が要となる世界なのだから信頼できる身内企業に委託しているという見解の方が理に適っているのではないかと思う。

 

4.株式会社ホットリンク

 政治資金収支報告書には株式会社ホットリンクへの定期的な支払が記載されている。ホットリンクは、SNSコンサルティングを主軸に事業展開している企業だ。SNSの運用委託でも依頼しているのかもしれない。創価学会が同様の委託をしているかは気になるところである。

 

5.公明新聞は全国の新聞社で印刷している

 公明新聞の印刷が全国各地の新聞社に委託されていることが分かる。創価学会のマスメディアへの影響力として引き合いに出される話である(学会の場合は聖教新聞)。しかしながら、金額から考えるに、企業からすればそこまでウェイトを占める仕事なのだろうかという感想を抱く。例えば、株式会社 新潟日報社には毎月200万弱が支払われているけれども、株式会社 新潟日報社の年商は150億2,591万円(2020年12月期)とのことだ(新潟日報社HPより)。

 

6.GutsProject有限会社の謎

 タイトルの回収である。公明党の報告書を読んで異彩を放っていると感じたのが、GutsProject有限会社である。所在地は大分県という表記だ。会社HPは無い。会社住所付近をグーグルストリートビューで調べてみると、住宅地に所在があるらしい。「マニフェスト制作代」としての支出が政党交付金使途等報告書に、「ネット活動費」という目的での支払いが政治資金収支報告書にそれぞれ記載されている。ネット活動費は定期的に支払われているようだ。額はそこまで多くない。

 

 わざわざ大分の企業を用いるというのが不思議である。何かと東京の企業の方が便利だろう。何らかの事情があって(情報保全に信頼のおける身内企業だと思うが)依頼しているのだろうが謎である。その道のベテランが大分県の住宅街で仙人のように事務所を構えているのか、大手代理店から独立したプロでもいるのか、とにかく謎である。

 

以上、特にオチは無い。