狂気従容

軍事、歴史、宗教などを語ります。

はじめにお読みください(注意書き&目次)

注意

このブログは、頭に貯めておくと駄目になりそうなことを文字にして吐き出す場所です。際どいテーマを記事にすることが多いと思いますが、それらを推奨・礼讃しているわけでありません。

 

また、特定のイデオロギー、思想、ある種の団体、特定政党、政権ないし政策に賛同または反対を表明するものではありません。政治的意図もございません。あしからず。

 

私は受け入れつつあります。

報われないであろうこと。

楽しみと呼べるものが少ないこと。

人に愛されないこと。

人を愛する感覚が無いこと。

壊れた人生であること、狂っていることを受け入れつつあります。

狂気従容です。

夢も希望もありません。

熱意や興奮もありません。

恋人もまともな家族もおりません。

友人は……少しだけおります。

ないない尽くしです。しかし、まだ死ねません。

生に未練があるのです。

 

目次

創価学会関係(教義、組織、歴史)

創価学会の歴史1 - 狂気従容

創価学会の歴史2 - 狂気従容

創価学会の会員数について(圧倒的な少子化) - 狂気従容

創価学会員物語1(仕事と家族) - 狂気従容

創価学会員物語2(婦人部の特異性) - 狂気従容

アメリカ創価学会の衰退 - 狂気従容

教義問題の思い出 - 狂気従容

創価学会の教義問題について(教義の一貫性とか独自性とか) - 狂気従容

創価学会の教義問題(その先にあるもの) - 狂気従容

創価学会の教義問題(本仏論) - 狂気従容

創価学会の教義問題(大御本尊関連) - 狂気従容

創価学会の教義問題(創価学会と日蓮正宗の不一致) - 狂気従容

創価学会の教義問題(日蓮と平和主義) - 狂気従容

創価学会の教義問題(知られていた矛盾と今後の課題) - 狂気従容

創価学会の教義問題(適当な本尊選び・宗創問題の不毛さ) - 狂気従容

創価学会の教義問題(いずれまた変わる教義) - 狂気従容

創価学会とインターネット - 狂気従容

創価学会職員について - 狂気従容

創価学会は戦わなくなった - 狂気従容

信仰の試行錯誤 - 狂気従容

創価学会が失敗した理由 - 狂気従容

創価学会の教義問題(日蓮は何を残したかったのか) - 狂気従容

創価教育機関の余命 - 狂気従容

米国公文書から読む池田会長の辞任劇と昭和54年問題 - 狂気従容

創価学会の教義問題(罰論功徳論と本尊) - 狂気従容

信濃町に目を付けられる人 - 狂気従容

価値創造と日蓮主義 - 狂気従容

会員が創価学会から離れる理由 - 狂気従容

約束された崩壊へ(創価家族の末路) - 狂気従容

創価学会の教義問題(無量義経と戸田城聖) - 狂気従容

本部職員の存在意義 - 狂気従容

本部職員の傾向 - 狂気従容

池田大作怒る(創価大学での思い出) - 狂気従容

池田大作との思い出 - 狂気従容

心こそ大切なのか - 狂気従容

創価学会の女性について - 狂気従容

半径5mの地獄 - 狂気従容

創価学会の推移(年表) - 狂気従容

八王子学生部の思い出 - 狂気従容

正木伸城氏のコラムを読んだ感想 - 狂気従容

嫌われているのは創価学会か - 狂気従容

創価学会の会員数について(統計データによる) - 狂気従容

使い古された言葉ー創価学会の元ネタ - 狂気従容

問われる創価学会の存在意義 - 狂気従容

 

創価学会公明党関係(公文書を中心に)

大阪都構想と創価学会 - 狂気従容

創価学会とアメリカ大使館(政変に関連する意見交換) - 狂気従容

公明党の歴史(前編) - 狂気従容

公明党の歴史(後編) - 狂気従容

公明党と自民党の歴史(自公連立政権ができるまで) - 狂気従容

創価学会と安全保障関係(アメリカ大使館との協議) - 狂気従容

創価学会とアメリカ大使館(内情の伝達) - 狂気従容

池田大作と公明党の相違1(1975年の公文書より) - 狂気従容

池田大作と公明党の相違2(創共協定に関連する公文書より) - 狂気従容

選挙活動の思い出(2009年の衆院選) - 狂気従容

巡航ミサイルと公明党と学会員 - 狂気従容

公明党は右傾化したか - 狂気従容

遠山清彦衆議院議員の辞職に見る創価の格差社会。 - 狂気従容

野党が公明党をガチ批判しない理由 - 狂気従容

連立政権ー歴代2位の与党歴の公明党 - 狂気従容

翻弄された沖縄公明党-在日米軍基地政策への葛藤 - 狂気従容

創価学会員と立憲民主党 - 狂気従容

創共協定と反共勢力としての創価学会(1975年のアメリカ公文書より) - 狂気従容

公明党の安全保障政策、その二枚舌(1977年の外交公電より) - 狂気従容

公明党は恥を知れ……そもそも恥もクソもねぇよ - 狂気従容

公明党に妙手なし - 狂気従容

 

宗教諸々

補陀落渡海 - 狂気従容

宗教2世・3世の問題について - 狂気従容

宗教から離れたいときー宗教2世3世へのTips - 狂気従容

 

軍事

おすすめ軍事書籍ー戦争における「人殺し」の心理学 - 狂気従容

おすすめ軍事書籍ー普通の人びと - 狂気従容

おすすめ軍事書籍ーこれが人間か - 狂気従容

おめすす軍事書籍ー ペリリュー・沖縄戦記 - 狂気従容

おすすめ軍事書籍ー容赦なき戦争 - 狂気従容

おすすめ軍事書籍ー機関銃の社会史 - 狂気従容

おすすめ軍事書籍ー裏切られた空 Der verratene Himmel - 狂気従容

おすすめ軍事書籍ー兵士たちの戦後史: 戦後日本社会を支えた人びと - 狂気従容

おすすめ軍事書籍ードキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争 - 狂気従容

ウクライナ紛争の情勢悪化について - 狂気従容

アメリカ空母に助けられた話 - 狂気従容

私観みなぎる回想(国防議論とかその辺) - 狂気従容

ロシアによるウクライナ侵攻について(3/13現在のちょっとしたまとめ) - 狂気従容

ロシアによるウクライナ侵攻について(3/26現在、予期される結末について) - 狂気従容

ロシアによるウクライナ侵略について(4/10のまとめ) - 狂気従容

ロシアによるウクライナ侵略について(6/4のまとめ) - 狂気従容

おすすめ軍事書籍ーイワンの戦争 - 狂気従容

おすすめ軍事書籍ー日本海軍400時間の証言: 軍令部・参謀たちが語った敗戦 - 狂気従容

池田大作逝去

 池田大作逝去。95歳だった。氏の訃報に触れて、私個人は悲しみも喜びも無い。池田大作が生きていようが死んでいようが、私の壊れた人生は変わらないからだ。創価学会3世として生まれた私は、あの男がいなければこの世に存在することも無かっただろう。存在するお陰で随分と苦しい人生を歩んでいる。未来も明るくない。とはいえ、氏に個人的な恨みはない。大学の創立者としての池田大作は嫌いじゃなかった。学内で特に悪いことをされた記憶はない。

 

 何度か記したと思うけれど、創価学会は戦後日本社会を批評する上で外せないテーマだと私は考えている。それは公明党という政治勢力の変遷という意味だけでなく、復興-成長-停滞-衰退という軌跡を描いてきた日本社会の縮図、そのサンプルとして示唆深いものがあると思う。地方と都市部の対立だったり、世代間の格差だったり、学術的な切り口は色々あるだろう。

 

 昭和を駆け抜け、平成に奮闘し、先の見えない令和に突入する群像劇の舞台。池田大作は劇中、一大俳優だった。創価学会が自らのナラティブとして宣揚している貧困や傷病からの復帰、地域の連帯、「一家和楽」の物語は多くの日本人が肯定してきたそれである。今現在、その物語は社会情勢の変化によりかつてほど受けが良くない訳だが、それもまた創価学会の中に、個々の創価学会員の人生にヒントがあるように思う。

 

 惜しむべきは、創価学会もそして池田大作も、あまりまともな研究の対象とされてこなかったことだろう。3流の宗教ネタとして、あるいは選挙の票を上げ下げする為のツールとして、創価学会は“内外”に利用されてきたと思う。教義問題を正面から扱うよりも、公明党の施策を統計や公文書から批評するよりも、奇異な宗教団体として湿った好奇心を満足させる方が、反日・反社会団体としてとして吊るし上げた方が、日蓮直系と自尊心を満たす方が、庶民の味方として売り物にした方が、より簡単に低コスト低リスクで目的を果たせてしまった。平成の前半、遅くとも自公連立10年の節目くらいには、もう少し客観的な調査批評対象とすべきだったと私は思う。それをしなかったのは日本人、そして創価学会員自身の選択である。

 

 徐々に衰退していくことが予測されている創価学会が今後まともな研究対象になる確率は低いだろう。山上徹也の銃弾が跳弾して宗教2世が注目されても、あまり状況は変わらなかった。創価学会に限らず、宗教団体全般をもう少し客観的に論証しようという試みがあるのは知っている。その運動が陽の目を見るまで、日本の宗教団体が勢力を維持しているか疑わしい。必要なタイミングで必要な成果を出すのは難しいだろう。念のため付け加えると、そういうムーブメントを牽引している人達を無力だと揶揄したいわけでは無い。大勢は決しているだろうとの私の推測である。もしまた宗教団体が注目される日が来るとすれば、本当に大きな社会変動ないし事件でも発生した時だ。

 

 これまでも本ブログで何度か紹介してきたように、創価学会、そして時には池田大作本人が米国大使館と政治的なコミュニケーションを交わしてきた歴史がある。これは並大抵の宗教団体あるいは普通の名士には出来ないことだ。創価学会は権力の一部を構成している。池田大作はその組織において、俳優兼監督として多くの人生に影響を与えた。それぞれの地において主演俳優を務める創価学会員にとって、池田大作は監督であり演技の見本だった。作品や俳優の好き嫌いとその出来栄えは違うものである。好みでないけれど、パフォーマンスを評価できる作品ないし役者というのも存在するだろう。逆もしかりである。

 

 ともあれ、池田大作はもういない。表舞台から姿を消して久しかったので、実際はとうに居なくなっていたと評価することもできる。しかし今は本当にいなくなった。私が気にすることがあるとすれば、創価大学生の行く末である。学内では、なにかと創立者池田大作を意識する機会が多い(好むと好まざると)。今の現役学生は表舞台にいた池田大作をほぼ見たこと無いだろうから、私が在学していた頃に亡くなるよりかは影響控えめだろう(私が在学時に亡くなっていたら周囲の空気を掴めなくて私は困っただろうな)。とはいえ、無視できるものでは決してない。

 

 創大生には池田大作創価学会固執することなく、自由にものを考えて頂きたいと思う。思慕と客観的な批評を並立させることはできる。昭和3年生まれの人間の、それも他人に切り取られた言葉に執着する必要はない。21世紀なりの評価を下し、それとは別に好きなように想えばいい。

恩師の墓参り

 赴いても何も変わるはずはない。失った夢や時間が帰ってくるわけでもない。それは分かっていたのだが、行かざるをえなかった。自分の意思で創価学会の墓苑に行くのはそうないことだ。

 

 電車を乗り継ぎタクシーに乗り込んで数時間。恐らくは都心部の学会員の多くが人生の終着点とするであろう墓苑を目指した。途中、車窓から見える景色が東京を離れるにつれ少しずつ田舎になっていった。移動する方角が違くなると(私は基本的に東西にしか移動しない)日本の見え方も変わるものだと感じた。師の出身地域に入ってからは明らかに灰色が減った。豊かな自然と集落の調和から、寂れているのとは違うのどかな雰囲気が伝わってきた。恩師は30歳近くまで彼の地で生活していた。おおらかなあの人が生まれ育った風景に違いなかった。

 

 駅からタクシーで30分。バスは1時間に1本あるかないか。アクセスはお世辞にもよくない。多分にマイカーで来訪することが前提になっている立地条件だ。学会の墓苑全般に言えることだが、とにかくアクセスが悪い。現役世代の層が厚い間はそれでも良かったのだろうが、高齢者だけでお参りするのは困難を伴うだろう。その内地域の学会員で墓苑バスツアーが始まるかもしれないと思ってしまった。

 

 生前、恩師の母親が亡くなった際にどこにお墓があるかは伺っていたので行くべき場所は把握していた。しかしながら、墓苑内のどこに納骨されているかは知らなかった。創価学会の墓苑では受付施設内で墓の検索ができる。検索機械で手間取っていると受付の青年が丁寧に教えてくれた。何となくだが、創大生のような気がした。

 

 墓石に水を掛け、無くした信仰心で7文字を唱えた。その日は良く晴れていて暑かった。墓石にもう一度たっぷりと水を流した。本当はウイスキー黒ラベルでも供えたいところだったが、学会の墓苑はお供え物禁止である。墓に飲ませるのは品がない。匂いにつられて野生動物がやってくるかもしれないとも思った。だから水を流すだけにした。

 

 取り敢えず生きています。それ以外に特に報告することも無かった。いや、言いたいことはあるにはあったけれど、今更言っても仕方がないことだった。生きていることに感謝出来るような日が私に来たならば、もう少し報告することもあるだろう。

 

 お盆も過ぎていたので墓苑は閑散としていた。いや、墓地が満員御礼と言うのもいただけないだろう。私が訪れた墓苑は街中から離れた小高い場所にあった。奇麗に整備されていた。見た範囲では管理が行き届いていた。緑豊かな風景によく溶け込んでいた。

 

 行きのタクシー代が4000円弱かかったので帰りは途中まで足に頼った。街を知るには歩くのが一番だと思う。丘の上のニュータウン、古い砂防施設、B級感を纏う県道沿いの店舗、雑踏としていない駅前。ドラマの出張回にでも使われそうな雰囲気だった。刺激的な展開は期待できないだろう。しかしながら各々に物語がある。そういう街なのだろう。

 

 発展し損ねた中小都市の我が故郷(そして今は私の生活基盤地域)で生きるために働いている日々が、何てことのない田舎街を青い芝生に仕立てたのかもしれない。それとも、久しぶりの遠出が私のハードルを下げたのだろうか。

 

 帰りの新幹線で寝過ごさない程度に黒ラベルを味わっていると、家族連れが多いことに気が付いた。帰省かあるいは旅行か。彼等には看取ってくれる人物がいるのだろうと独り言が漏れそうになった。シラフだったら耐えられなかったかもしれない。その日は寄り道することなくクソみたいな地元に戻った。

自衛隊車両のウクライナへの提供はおそらく武器提供にあたる

 日本がウクライナに100台規模の自衛隊車両を提供することになった。殺傷能力がないとはいえ、いよいよ日本も一歩踏み込んだ形だ。

https://www.mod.go.jp/j/press/news/2023/05/21_01.pdf

 

 ウクライナに提供される車両はいずれも汎用車両で、人員資材の運搬を主目的としている。戦車や自走砲と違い、車両自体に殺傷能力はない。一部の車両は火器の設置が可能ではあるが、あくまでもオプションで設置可能という程度のものだ。

 

 以前の記事でウクライナへの武器提供について考えていることを記事にした。

https://kyouki-shouyou.hatenablog.com/entry/2023/04/24/000901

 

 汎用車両は政治的ハードルがそこまで高くない(それ単体に殺傷能力が無いため)。保守メンテナンス的にどうかと思う部分があったけれども、民間車両用のリソースを活用できるということだろう。 

 

 さて、殺傷能力の無い自衛隊車両であるが、これはおそらく武器に該当する。そして、現行の解釈で提供出来るかは本来的には際どい部分を含むと思われる。日本は、ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始した直後、防衛装備移転三原則の運用指針に「国際法違反の侵略を受けているウクライナに対して自衛隊法第116条の3の規定に基づき防衛大臣が譲渡する装備品等に含まれる防衛装備の海外移転」を新設して、ウクライナに防弾チョッキ(とヘルメット)を提供した。

https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/bouei3.pdf

 

 自衛隊法第116条の3では、途上国への不用装備品等の譲渡がうたわれているけれど、「装備品等(装備品、船舶、航空機又は需品をいい、武器(弾薬を含む。)を除く。以下この条において同じ。)の譲渡」とあるように現行では武器弾薬は提供できない状態である。では武器とは何か、武器の定義はどうなのかと言うと、これは経産省の輸出貿易管理令(昭和24年政令第378号)別表第1の1の項に記載されている。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324CO0000000378

 

別表第1の1の項を以下に引用する。

                        別表第一(第一条、第四条関係)

       

(一) 銃砲若しくはこれに用いる銃砲弾(発光又は発煙のために用いるものを含     む。)若しくはこれらの附属品又はこれらの部分品

(二) 爆発物(銃砲弾を除く。)若しくはこれを投下し、若しくは発射する装置若しくはこれらの附属品又はこれらの部分品

(三) 火薬類(爆発物を除く。)又は軍用燃料

(四) 火薬又は爆薬の安定剤

(五) 指向性エネルギー兵器又はその部分品

(六) 運動エネルギー兵器(銃砲を除く。)若しくはその発射体又はこれらの部分品

(七) 軍用車両若しくはその附属品若しくは軍用仮設橋又はこれらの部分品

(八) 軍用船舶若しくはその船体若しくは附属品又はこれらの部分品

(九) 軍用航空機若しくはその附属品又はこれらの部分品

(十) 防潜網若しくは魚雷防御網又は磁気機雷掃海用の浮揚性電らん

(十一) 装甲板、軍用ヘルメット若しくは防弾衣又はこれらの部分品

(十二) 軍用探照灯又はその制御装置

(十三) 軍用の細菌製剤、化学製剤若しくは放射性製剤又はこれらの散布、防護、浄化、探知若しくは識別のための装置若しくはその部分品

(十三の二) 軍用の細菌製剤、化学製剤又は放射性製剤の浄化のために特に配合した化学物質の混合物

(十四) 軍用の化学製剤の探知若しくは識別のための生体高分子若しくはその製造に用いる細胞株又は軍用の化学製剤の浄化若しくは分解のための生体触媒若しくはその製造に必要な遺伝情報を含んでいるベクター、ウイルス若しくは細胞株

(十五) 軍用火薬類の製造設備若しくは試験装置又はこれらの部分品

(十六) 兵器の製造用に特に設計した装置若しくは試験装置又はこれらの部分品若しくは附属品

(十七) 軍用人工衛星又はその部分品

 

 (七)にあるように、軍用車両は武器扱いである。経産省のQ&Aによれば、以下の説明分が記されている。以下引用する。

安全保障貿易管理**Export Control*Q&A

 

 「防衛装備」とは、「武器」及び「武器技術」のことをいいます。「武器」とは、輸出貿易管理令(昭和24年政令第378号)別表第1の1の項に掲げるもののうち、軍隊が使用するものであって、直接戦闘の用に供されるものをいい、「武器技術」とは、武器の設計、製造又は使用に係る技術をいいます。いずれの定義もこれまでと同様のものです。なお、「防衛装備」に当たるか否かは、当該貨物(技術)の形状、属性等から客観的に武器専用品(専用の武器技術)と判断できるものとし、いわゆる汎用品は、防衛装備移転三原則における「防衛装備」には該当しないものとしています。

 

 今回提供する車両は軍用車両である。軍用車両は武器扱いであるから、別表第1の1の項だけを考えれば、殺傷能力は無くとも武器と解釈出来るだろう。経産省のQ&Aにある「軍隊が使用するものであって、直接戦闘の用に供されるものをいい」の「直接戦闘の用」がどこまでを指すのか判断するのは難しい。前線まで兵員を運ぶのは、「戦闘の用」には該当するのではないかと思う。火器類を車両に設置して発砲した場合、「直接戦闘の用」に該当する。迫撃砲やミサイルを運搬する場合、車両から降ろした砲やミサイルがその場で発砲したら「直接戦闘の用」に該当するかもしれない。長距離砲撃を行う大砲類に弾薬を運搬するのも、「直接戦闘の用」と言えるかもしれない。正直なところ、線引きは困難だ。

 

 実際のところは、自衛隊規格の汎用車両が現地でどのように運用されるか、見てみないと分からない部分もある。今回提供される車両は装甲化されていないので、敵の攻撃に脆弱である。余り前線に近い場所で運用すれば、直ぐに撃破されてしまうかもしれない。後方で、縁の下の力持ちとして使用される可能性もある。ただ、民間車両が兵員運搬に使用されているくらい物が無い状態なので、軍用車両が安全な場所だけで仕事を任される保証はないだろう。

 

 上記の別表第1の1の項によれば、防弾チョッキも(そして軍用ヘルメットも)武器扱いになる(項目十一に該当)。そして防弾チョッキやヘルメットは、前線の兵士が使用するならば「直接戦闘の用」に該当すると言わざるを得ない(敵の銃弾や砲弾の破片から身を守る装備なので戦闘以外に活用方法がない)。車両提供も同様であるが、民生品の存在する汎用品という解釈も出来なくはないけれども、苦しいだろう(自衛隊車両=軍用車両なので)。

 

 現実に目を向ければ、解釈論議を言葉遊びと評する人もいるだろう。砲撃誘導に用いられる小型ドローンの多くは民生品だと思われるが(何なら爆撃もする)、明らかに「直接戦闘の用」に供されている現状を見れば、法的な解釈が道具の用途や価値を定義するわけでは無いことは明らかだ。創意工夫が求められる戦場なら尚更だ。

 

 今回の車両提供に限らず、本来日本は殺傷能力の有無に関わらず、自衛隊法第116条の3の規定を根拠にウクライナへ武器を提供するのは解釈的に難しいのではないかと思う。日本の安全保障政策は、それこそ憲法を筆頭に、状況が困難になってから解釈を構築してきた部分があるので、今回もその一例と言われればそれまでかもしれない。あるいは、私が知らないだけでスッキリとした解釈がどこかにあるのかもしれない。

 

 いずれにせよ、日本は大きく一歩踏み込んだ。

原子力発電所への武力攻撃について

 原子力発電所へのミサイル等による武力攻撃を危惧する話が度々話題になる。あのロシアですら原子炉建屋(格納容器)を破壊する目的で原発を攻撃していない現状、原発を直接狙うような国とまともな外交関係を築けるとは思わないけれども、実際、日本の原発が攻撃されるリスクとはどのようなものか考えてみる。まずは基本的な話として、以下4点を考慮する必要がある。

 

  1. 日本は日米安全保障条約により米国と同盟関係にある
  2. 日本への武力攻撃は米国の反撃を引き起こす
  3. 日本の原発を直接攻撃することは米国からの核による報復を招く恐れがある
  4. 原発の原子炉建屋(と格納容器)は非常に頑丈で外から破壊するにはそれなりの火力が必要である

 

 1~3の時点で、原発への直接攻撃は攻撃する側にもかなりのリスクが存在することが分かるだろう。4に関しては、原発の原子炉建屋(と格納容器)を破壊するには、巡航ミサイル、弾道弾、大型の航空爆弾、あるいはある程度の戦力を有したコマンド部隊が必要となることを意味している。

 

 現状、日本と交戦しそうな国と言えば、北朝鮮、中国、ロシアの3ヶ国であるが、彼等が日本の原発を破壊するとしたら、実行能力的にかなり困難なミッションとなるだろう。格納容器を正確に破壊するには、それなりの命中精度が必要となる。弾道弾はものによっては原子炉建屋には当たりそうではあるが、格納容器を吹き飛ばすには命中精度的に運の要素が絡むだろう(通常弾頭の場合)。巡航ミサイル、航空爆弾は精度的には申し分ないけれど、迎撃される確率が高くなる。コマンド部隊による強襲は、武器の運搬や部隊の潜入が順調に進み、原発を警護する警備隊をすみやかに排除できた場合、任務を達成できるものと思われる。

 

 どの手段を用いてもハードな任務である。何かと話題のドローンでは、火薬量的に足りないだろう。大型のドローンを日本国内に持ち込むのは難しいだろうし、建屋の中にある格納容器を破壊するにはやはり火力が足りない。どうにかして大量の火薬を日本国内で確保して(トン単位で)、VIED方式でトラックにでも載せてカミカゼした方が確実だろう。しかしながら、日本国内で大量の火薬を手に入れるのは困難だ(協力者がいれば多少らくになる)。

 

 つまるところ、日米安保の抑止力と、目標への到達困難さから、原発が武力攻撃によって破壊される蓋然性は高くないのである。ここまでは、既に多くの方が指摘している話である。

 

 では戦時において原発にリスクは無いかと言えば、必ずしもそうではない。原子炉建屋の直接破壊以外の部分に目を向ければ、弱点は存在する。外部電源である。3.11の事故において、核燃料および格納容器が損傷してしまった原因は、外部電源と非常用緊急電源の両方を損失し、原子炉を冷却できなくなったことにある。原発が稼働している場合、原発で用いる電力は原発自身が提供する。忘れがちであるが、原発を利用するにも電力が必要である。稼働していない原発においても同様で、維持管理のために電力を使用する。この場合は外部電源に依存することになる。

 

 外部電源となる発電所の多くは火力発電所だと思われるが、火力発電所は攻撃の対象となり得る。実際、ロシア軍はウクライナの火力発電所を攻撃している。また、NATOによるユーゴスラビア空爆においても発電所は攻撃対象になった(火力発電所かは確認できなかった)。但し、NATO軍による発電所攻撃は停電爆弾(送電線をショートさせるための繊維が詰まっている爆弾)を使用したソフトキルが主体だったと思われる。ロシア軍はミサイルや無人機による物理的な破壊を狙ったが、ウクライナの電力供給を止めることはできなかった(一時的な被害は発生した)。火力不足だろう。

 

 ウクライナの前線近く、ロシア軍が占領しているザポリージャ原発では、外部電源の損失が発生している。

https://www.cnn.co.jp/world/35201169.html

ザポリージャ原発は稼働を停止しているが、電源損失が続けば(緊急発電機の燃料も尽きれば)、重大事故は免れない。ロシア軍の攻撃による外部電源の損失が、意図的なものかは不明であるが、原発を直接攻撃しなくとも、原発を危険な状態に追い込むことは可能である。

 

 日本の場合、例えば再稼働に向けて整備中の女川原発では、外部電源は複数系統を確保し、非常用ディーゼル発電以外にも、ガスタービン発電機車および電源車を配置するなど、電源損失を防ぐための措置が取られている。電源確保の多重化または多様化は、他の原発においても採用される。以下、「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則」より抜粋。

実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則 | e-Gov法令検索

(安全施設)

第十二条 安全施設は、その安全機能の重要度に応じて、安全機能が確保されたものでなければならない。

2 安全機能を有する系統のうち、安全機能の重要度が特に高い安全機能を有するものは、当該系統を構成する機械又は器具の単一故障(単一の原因によって一つの機械又は器具が所定の安全機能を失うこと(従属要因による多重故障を含む。)をいう。以下同じ。)が発生した場合であって、外部電源が利用できない場合においても機能できるよう、当該系統を構成する機械又は器具の機能、構造及び動作原理を考慮して、多重性又は多様性を確保し、及び独立性を確保するものでなければならない。

 

 ガスタービン発電機車などは原発施設内あるいは周辺に配置されているので、これを武力攻撃することは原子炉への直接攻撃とみなされるだろう。それ等が使用する燃料の貯蔵施設に対しても同様である。問題は先にも述べたように外部電源にある。外部電源である火力発電所、そこからの電力網(変電所や送電線)が攻撃対象となった場合だ。もっとも、電力網を広域的に破壊するにはかなりの火力投射が必要で(ロシアは失敗した)、原発を直接狙う以上の難易度があるかもしれない(そして攻撃国本土の同様施設が報復対象になる)。

 

 潜入したコマンド部隊が送電線の破壊を目的とした場合、原発施設を狙うよりも容易に任務を達成するだろう。それこそ、小型ドローンにアルミホイルでもぶら下げて送電線にぶつければ一時的な停電は引き起こせる。継続的となると鉄塔や変電所を爆破する必要性が出てくるけれども、やはり原発を直接狙うよりかは容易だろう。

 

 非常用発電には継続的な燃料投入が必要になるので(火力発電所にしても同様ですが)、外部電源が損失した状態で原発にアクセスするための橋梁や主要道路が損傷した場合(これは直接攻撃とみなされるかもしれないが)、燃料供給が途絶え全電源損失という事態は発生しうる。原発が停止している場合であっても、電源損失が続いた場合、核燃料の損傷は引き起こされる(冷却機能の停止による)。それで直ちに周辺住民に健康被害が発生するとは限らないけれども、被害拡大防止に多大なリソースを割くことにはなるだろう。攻撃が段階的であれば、警告を発する余地も残る。

 

 攻撃側が意図することなく、ミサイル攻撃等で外部電源の損失と非常用発電の燃料供給が停止してしまい、全電源損失を経ての核燃料や格納容器の損傷が発生した場合、どこまでの報復攻撃が可能だろうか。やはり同様の報復攻撃をするだろうか。報復攻撃に原発を直接狙わなくとも、巨大ダムの破壊くらいはするかもしれない(ダム攻撃は過去の戦争でも何度か行われている)。

 

 実際問題、意図することなく全電源損失が発生する蓋然性がどのくらいあるかは不明瞭だ。電力網を広域にわたって寸断した時点で原発への影響は推測されるだろうし、そもそも実行能力的に可能であるかも疑問が残る。前述したように、広域にわたって継続的にインフラ施設を無力化するにはかなりの火力投射が必要になり、日米の防空網を破って成果をあげるには攻撃側も多くの戦力を割くことになる(つまり前線で必要な火力が減少する)。また、日本本土の電力網を破壊しようとした時点で、攻撃国の本土が報復攻撃の対象となる。それがたとえ通常兵器によるものだとしても、無傷では済まされないだろう。コマンド攻撃、サイバー攻撃にしても同様で、報復を招くだろう。

 

 マニアックなことをツラツラと記述してしまった。特に結論は無い。原発への武力行使という議論が、稼働中の原発における原子路建屋への攻撃という部分にフォーカスされがちなので、そうでない部分を考えてみた。不測の事態と言うのは起こり得るものだ。現在においてはザポリージャ原子力発電所がその状態にある。

ウクライナへの武器提供について

 岸田総理がウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談した。戦時下の国を首相が訪れるのは異例のことだ。他のG7加盟国と歩調を合わせる必要もあったのだろうが、命を張るというのはどの様な立場の人物であっても簡単にできることでは無い。他国(おそらくは米国が一番だろうが)からの視線を感じての訪宇という部分もあったのかもしれないけれど、岸田総理なりの覚悟なり強い意思もあっただろう。

 

 さて、本番はこれからである。しゃもじを送るために命を張ったわけでは無いのは明白である。日本語情報しか追っていないが、岸田総理の訪宇に際し、ゼレンスキー大統領から日本への明確な武器援助要望は示されなかった。ゼレンスキー大統領は欧米への武器援助要請を頻繁に表明する。日本にはしなかった。現行の日本においては、殺傷力のある武器をウクライナに提供することは出来ない。今回の訪宇において発表されたウクライナへの支援内容も、非軍事的な分野と殺傷力の無い装備品に関する物だけだ。ウクライナは日本の立場を理解していると解釈することも出来る。

 

 しかしながら、敢えて言及しなかった(少なくとも公にはされていない)のではないだろうかと私は考えている。日本にとって、殺傷力のある武器支援は相当にセンシティブな内容で、ハードルは高い。ウクライナとしては、貰える支援は何でも助かるだろう。軍事的か非軍事的かの選択ではなく、できれば両方頂きたい立場である(戦争中なのだから当然)。ウクライナ側からのアプローチが、日本の政策変更の妨げになるから、武器援助の話題は前面には出さないでおいて、民間部門における支援への感謝と引き続きの支援を願うという形をとったのではないかと思う。結果的に日本が武器提供できる環境を整えることが出来るならば、その方がウクライナにとっては得策だ。

 

 日本側からの調整でもあったと思う。岸田総理が本気でウクライナに殺傷力のある武器を提供することを考えているとしたら(私はそう判断している)、国内政治の持ち運び方を計算しなければならない。どの様な段取りで政策変更を達成するかということだ。もしゼレンスキー大統領から武器提供を強く要望されれば、日本側としても何らかの回答をしなければならない。その回答内容が何であれ、日本国内で話題を呼ぶことになるだろう。国会で追及されるかもしれない。それは上手い段取りではない。

 

 岸田総理は帰国直後の3月23日、国会においてウクライナ訪問を報告し、以下のように述べている。

「ロシアによる侵略の惨劇の現場、直接目の当たりにさせていただきました。こうした惨劇を繰り返さないためにロシアによる侵略、これ一刻も早く止めなければなりません」

もしここで、ウクライナ側からの強い武器援助要請が公に示されていた場合、そのことについてどの様な対応をするか、言及する必要があっただろう。下地調整ができていない段階でそれは下策だ。

 

 岸田総理はブチャを訪問した。ロシア軍による組織的な戦争犯罪があったとされる場所だ(実際、拷問の痕がある民間人の遺体が多数見つかっている)。上記の発言には説得力がある。まずは土壌を整えたと見るべきだ。正直なところ、訪宇というインパクトの割に手土産が地味だったと思えるけれど(私にはそう思えた)、必要な手順を踏んでいるのだろう。

 

 岸田政権はウクライナに殺傷能力のある武器を提供するつもりである。昨年から与党内での調整に関してチラチラと報道があった。近いところでは以下のとおりである。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230421/k10014044871000.html

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230420/k10014044161000.html

 

 私は、ウクライナが武器提供に関して大っぴらに言及してくると思っていた。それに対して、

国際法違反の侵略を受け、またブチャを始めとした凄惨な被害を受けている貴国に対し、より踏み込んだ支援ができるようにしていきたい」

くらいの返答を岸田総理はするのではないかと考えていた。今のウクライナは砲弾不足が深刻であり、また大砲や戦車等の正面装備も整っていない。前述したが、ゼレンスキー大統領は欧米諸国に対しては頻繁に援助の必要性を訴えている。私は当初、ウクライナからの支援要請を踏み台に、殺傷能力のある武器提供へと進んでいくものと考えていた。その点では、予想は外れたと言える。

 

 岸田総理は武器提供に本気だと私が思う根拠は2点ある。1点目は、先に述べたようにウクライナの砲弾不足が深刻だからである(兵器全般が足りない)。現状、ウクライナに砲弾を短期間で供給できそうな国家の一つが日本である。ウクライナ支援の最大国であるアメリカも砲弾の在庫が不足し、韓国から購入している。西側諸国として足並をそろえるならば、喫緊の課題である砲弾不足にコミットする必要がある。2点目は、多くの識者が言及している様に、予想される台湾有事に向けて日本の環境を整備する必要があるからだ。日本政府としては、この機を逃す手はない。内外の要請があるということだ。

 

 政府としては、ウクライナに殺傷能力のある武器を提供する方針である。自民党側に武器供給に対する反対論はそうない(一部の親ロシア議員を除いて)。後は公明党がどうするか。公明党は厳しい判断を迫られるだろう。殺傷力のある武器を海外の戦争当事国に提供するとなれば、戦後日本の安全保障政策の大きな転換点になる。自民党公明党で、落とし所は調整中と思われる。 岸田総理が現地に行ったことで、公明党を説得する材料は増えただろう。公明党的にも支持者を納得させやすくなった。

 

 今回の訪宇は、かつてイラクへの自衛隊派遣に際して、公明党の神崎代表(当時)がイラクを訪問したのと若干既視感がある。リスクを負い現地を見たという実績をもって発案ないし根拠材料にするのだと。公明党を納得させるためだけに訪問したわけでは無いだろうが、国内世論を引っ張る意味合いも含まれていただろう。

 

 日本は、ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始した直後、防衛装備移転三原則の運用指針に「国際法違反の侵略を受けているウクライナに対して自衛隊法第116条の3の規定に基づき防衛大臣が譲渡する装備品等に含まれる防衛装備の海外移転」を新設して、ウクライナに防弾チョッキを提供した。自衛隊法第116条の3では、途上国への不用装備品等の譲渡がうたわれているけれど、「装備品等(装備品、船舶、航空機又は需品をいい、武器(弾薬を含む。)を除く。以下この条において同じ。)の譲渡」とあるように現行では武器弾薬は提供できない。殺傷能力のある武器を提供するためには、運用指針の再度改変が必要である。改変は既定路線として、実際に何を提供するかが焦点になってくる。

 

 兵器の提供に関してハードルは2つある。政治的なハードルと物理的なハードルだ。長距離ミサイルや戦闘機の類が、本来政治的ハードルの高い兵器である(軍艦も該当するけれどウクライナにおいて需要は高くない)。しかしながら、そもそも日本には提供できる該当兵器が存在しない。戦闘機は勝手に提供できないし(米国製品が多い)、長距離ミサイルは保有していない。国産対艦ミサイルはウクライナ戦闘機に搭載困難だから提供できない(ウクライナには魔改造の実例があるから無理とまでは言い切れない部分もある)。そういう意味では、兵器提供全般に公明党が支障(国内政治上のハードル)になっているだけかもしれない。無い袖は振れないのだから。

 

 物理的なハードルで言えば、保守整備のサービスも一緒に提供する必要が出てくる国産の重装備は難易度が高い。兵器だけでなく、近隣国に整備工場を増築する必要がある(この点、欧米兵器は既存の施設をある程度利用できる)。他の地域への流出が懸念される小型火器に関しては、政治的にも物理的にもリスクがあると言える。

 

 政治的にも物理的にも提供しやすいと言えるのが、対空ミサイル、対空機関砲の類だ。都市への無差別攻撃を防ぐという名目(殺傷能力はあるけれども防御的な兵器という解釈が成り立つ)で供給しやすいだろう。既に諸外国がウクライナに提供しているのと同系統の兵器を自衛隊保有している(パトリオット、ホーク)。また、対空機関砲ならばウクライナ国内での整備もある程度可能と思われる(機材がそこまで複雑でない)。

 

 大砲の砲弾類に関しては、現地で消費してもらえばいいので物理的なハードルは低い。大砲と自走砲は、他国がウクライナに提供したのと同種の装備があるから、物理的なハードルは下がる(整備インフラを流用できる)。攻撃的要素が大きいので、砲弾にしても、それを発射する大砲、自走砲にしても、政治的ハードル(公明党の反対)は比較的高いと言えるだろう。戦車は政治的にも物理的にもハードルが高い。物理的なハードルの高さは、前述したように保守サービスの提供が困難だからである。政治的な難しさは、戦車の持つインパクトにある。既に欧米各国がウクライナに戦車を提供しているとはいえ、暴力性を想像させやすい兵器である戦車を提供するのは国民(と公明党)からの反発が予期される。

 

 他には、レーダー類や汎用車両、軽装甲車両の提供が考えられる。政治的ハードルはそこまで高くない(それ単体に殺傷能力が無いため)。しかしながら、やはり保守メンテナンスの部分で課題があると思われる(汎用車両はどうにかなるか)。また、レーダー類は鹵獲された際の情報漏洩がリスクになる。

 

 上記の引用記事では、公明党石井幹事長の「サミット前に防衛装備移転三原則見直しは難しい」との発言が記載されている。また、公明党の武器提供に対する慎重姿勢は何度か報道されてきた。選挙期間中に、平和の党を標榜する公明党が武器提供に賛同するコメントを寄せるとは思えないので、実際の落としどころを何処に設定しているのかは分からない。記事によれば、25日から自民・公明の協議が始まるそうだ。

 

 私の予測としては、対空兵器を中心に武器提供へ舵を切るのではないかと思っている。砲弾も渡すかもしれない。大砲はもしかしたら提供するかもしれない。戦車は無いだろう。戦車を提供しないことを、公明党が“ブレーキをかけた”と表現するかもしれない。実際には、政治的なハードルではなく物理的なハードルが問題になるのだが、公明党には都合の良い解釈だろう。

 

 前述したように、岸田総理がブチャの現場を訪れたことを支持者(創価学会員)への説得材料にできる。「武器提供には慎重姿勢だったけれども、岸田総理から現地の情勢を伺い、余りにも残虐な国際法違反の行為に対抗するためには、武器を提供するしかないとの判断になった。対空ミサイルは都市部民間人を守る防御的な兵器として使ってもらう。戦争がこれ以上拡大過熱しないよう、公明党の要請で戦車等の提供は見送らせた」というシナリオがあるのではないかと考えている。

 

 このウクライナへの武器提供は、国内政治の問題ではなく、国際的な問題である。岸田総理も、「戦後の事情及び公明党が反対したので無理でした」という発言で諸外国が納得するとは考えていないだろう。国内世論には効果があっても、国際世論には通じない。国内外を同時に納得させ難い公明党は苦しい判断を迫られるだろうが、どうなるか。戦後日本の安全保障政策大転換が迫っている。

長井秀和氏の西東京市議会議員選挙当選について

 長井秀和氏が西東京市議会議員選挙において当選した。3,482票獲得でトップ当選の結果だった。2位当選との差は500票近い。ダントツの1位当選と言っていいだろう。長井氏は西東京市において、1年以上も辻立ちを継続していたらしい。元々の知名度と相まって、票を積み上げる原動力となったのだろう。

 

 先に断っておくと、私は長井氏を特に支持しているわけではない。長井氏の舞い方は、データ重視の私とは肌が合わないだろうなとは思うものの、肯定も否定も特にない。ただ、氏が創価学会にどの様な影響を与えるか興味がある。

 

 長井氏の当選について、様々なコメント・指摘がされているー選挙期間中の創価学会からの提訴は斬新ではあったー。氏の今後の活動や影響力について、いくつか記述してみたいと思う。

 

1. 市議会議員の影響力・活動範囲は市内に留まらない

 市議会議員の影響力は市内に限定されない。特に、長井氏のような著名人であれば、SNSでの情報発信含め、市町村の境を跨いで波紋は広まるだろう。

 

 市会議員の仕事として市外に視察に行くこともあれば、都道県議会議員(長井氏の場合は主に都議会議員)と協議をする機会もあるだろう(防災関係がわかりやすい例)。他市町村区の議員と広域的に連携することも可能だ。宗教問題をテーマに掲げ、自治体を横断しての連携も視野に入れているかもしれない。まずは西東京市の内側で活動していくだろうけれども、長井氏にはー氏の知名度を抜きにしてもー市外に干渉する能力機会がある。

 

2.市議会のテーマは市政に限定されない

 原子力平和の街とか平和宣言の街とか、見かけたことはないだろうか。最近では、防衛関係で地方議会レベルでの反意がニュースになっている。市議会だからと言って、テーマが市内に限定されるわけではない。基本は市内の話が中心にはなるものの、宗教問題が議題になる可能性はある(議会での質疑にテーマ上の制約は無いと思うが……どうだろう)。

 

3.議員の活動は議会に限定されない

 おそらく、多くの方が誤認識していると思う。市議会議員の仕事場は、議場に限定されているわけではない。行政組織(市役所)に直接赴いて、協議調整することが可能だ。どの程度まで可能かは各自治体の条例や慣例に依存するだろうけれど、市議会議員が市役所の窓口に出向くことはそれなりにある。小さな要望程度ならば、担当者に直接話をするかもしれない。

 

 公明党共産党所属の地方議員の方は、フットワーク軽く細かい課題までよく対応することで有名だが(もちろん他党議員や無所属の方にもそういう方はいるでしょう)、いちいち議会の採決で結果を出しているわけではない。自分から行政組織に出かけて、協議や意見交換を重ねて動かしている。

 

 そもそも、地方議会も国会と同じく会期が存在する。年がら年中、議会がオープンになっているわけではない。議場で鋭い質問をするよりも、議会が閉会している時にどれだけ地域を巡るかが、その人の地道な評価につながるだろう。

 

 議会で多数派に成れないから影響力は限定的という認識は誤りである。条例制定や予算案の採決において数を行使できないとしても、政治家としてのポテンシャルは戦い方次第で変化する。

 

4.組織が無くとも声は響く

 力強い後援組織が無くとも、トップ当選した議員の存在感は大きい。議会の議長となる議員も行政長(長井氏の場合は市長)も、その後ろにいる有権者を見ている。長井氏の場合は発信力もある。ぞんざいな扱いをすれば、思わぬ反撃を喰らうかもしれない。特に、行政長の場合は選挙となれば長井氏を支持した人物も潜在的な得票源だ。真っ向勝負で対決姿勢を示すのでなければ、協議や融和の余地を残すだろう。 

 

 西東京市長の政策も為人も存じていないけれども、無難な戦術をとるならば公明党にも配慮しつつ、長井氏とも付き合っていく必要がある。前述したように、市長が長井氏との対決姿勢を明確にするならば別であるが、それは長井氏に「行政組織との対決」を促すだろう。

 

 例えばシチュエーションはこうだ。宗教2世3世として育ったが故に苦しんでいる西東京市民がいたとする。市長が長井氏との対話を拒否すれば、長井氏はそういう人物をつれて直接市役所を訪れ、担当課を問いただすかもしれない。生活苦ならば社会福祉関係、対象が子供ならば教育委員会。その様子を動画なりSNSで発信していけば、行政サイドも対応を迫られるだろう。お互いに計算ができる人物ならばいきなりそういう行動には移らないと思うが、いざとなれば苛烈な戦い方も選択できるということだ。長井氏の後ろに強力な支援団体はいないかもしれないが、3,482人の市民からの投票と数万人のフォロワーがいる。

 

 思いついたことを、一般論として指摘できることを中心に書かせてもらった。

 

創価学会はどう反応するか

 以下は、創価学会サイドの反応についての感想等である。完全に私見であることを了承して、読んで頂きたい。

 

 長井氏に対して、創価学会は提訴というカードを切った。創価学会的には、話題にならないことが一番被害を少なくするだろうからー裁判で長井氏や週刊誌に勝訴しても一般人の創価学会評は高くならないー、話題が冷めるまで放置する可能性もあると私は見ていた。実際に警察が捜査に動いているのか現時点(R4年12月28日)では不明であるが(私は知らない)、創価学会は対決姿勢を示した。長井氏の影響力を無視できないと思ったのか、梁島全国男子部長自ら、創価学会が長井氏を提訴したことをTwitterに投稿している。

 

 来年には統一地方選挙があるので、問題が尾を引くのを嫌ったのかもしれない。上記提訴の前に、週刊誌記事に対する抗議も行っていた。

 

 私は、長井氏になびくようなタイプは元々創価学会のリソースとして期待値が低いと推測しているので、長井氏による内部票の低下を創価学会はそこまで恐れてはいないと思う。気にするとすれば、外への影響だ。ただ地方選は全体的に投票率が低く、無党派層への長井氏の影響力がそこまで選挙に影響するかと言われれば、創価学会の見積もりは高くないだろう。衆議院が解散すれば別の話である。内部票と活動家への影響という点では、立場的にも主張的にも、正木伸城氏の方がポテンシャルがありそうである。

 

★おまけ

 もし私が何らかのシチュエーションにおいて、発信力のある街頭で魅せるタイプの分かりやすい敵対者と、地味な発言ながらも時間をかけて同調者を呼び込みそうな改革派の運動家と、その両方を相手にしなければならいとしたら、まず両名を”同様の行動をとる同様の敵”と周囲が認識するようレッテルを張る。かつての紛争をナラティブとして利用できるなら利用する。「私の敵はいつも同じパターンである云々」と物語の形成に努めるだろう。

 

 前者には外からも認識しやすいパフォーマンス染みた対応をしつつ、後者には行間や比喩で牽制しつつ閉じた場所でジメジメとした合意形成を図り、親縁者や友人を用いたからめ手をひっそりと講じ対処するだろう。外から攻めてくる人物と内側から削り取ってきそうな人物と、両者の行動が相乗効果となって現れないよう注意しつつ、外には分かりやすい手立てを、内には見えざる防壁を築くように努める。どの道損切の戦いになるだろうから、主眼はマイナス分の減少におく。必要ならば、本来的には敵対しそうな人物の論評を切り貼りして引用するだろう。些末な相違を指摘することで潜在的な敵対者達の分離分断を狙えるかもしれない。

 

 泥仕合をけしかけて消耗戦に持ち込めば、私の方が体力があるならば有利にことを運べるだろう。破壊ではなく改革を掲げる者には、クリーンなイメージを損なうようなレッテル張りがより有効打になるだろう。決まったタイミングで一斉に黙ったり、合図と共に一斉に吠えてくれるような子飼いの犬達、何らかの指摘に対して「自己紹介ですか?」と煽れるような尖兵がいればなお好都合だ。まぁそれは組織にしかできない戦い方だ。独り身のSalemには不可能である。

創価学会の年間収入および資産について(シンガポール創価学会の会計報告からの推定)

 防衛費増額のニュースが大きく取り上げられ、旧統一教会関係の話題が減っていくことが予測される。防衛費を拡大することは、どの政党であっても選挙的にはマイナスにしかならない。これまで平和主義を掲げてきた公明党は、与党という立場もあって、大きなハンデになるだろう。

 

 さて、タイトルにあるように創価学会の資産について、出来る限りの推測をしてみよう。前回も引用したが、自公政権の間は情報開示が機能することはなさそうなので、

 

文化庁が宗教法人と交わした「裏約束」の正体 | 宗教を問う | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

 

自分で何か探すしかない。大手メディアも切り込まないとなれば、創価学会の財務や保有資産を客観的に検証することは困難であるかもしれない。しかしながら、何もしないよりかはいいだろう。ちなみにであるが、最近メディアに露出している数字としては以下のものがある。

 

創価学会マネーがコロナで縮小、「財務=お布施が激減」も?【危機(2)縮む経済力】 | 創価学会 90年目の9大危機 | ダイヤモンド・オンライン

 

 ダイアモンドの記事で引用されている、「自民党熊代昭彦衆議院議員(当時)が、「創価学会さんは10兆円の資産と毎年2000億円ないし3000億円の特別財務、それが全て無税扱いである」と指摘している。」の部分については、以下リンク先議事録で確認できる。

 

国会会議録検索システム

 

熊代氏の発言に対し国税庁は「個別の事柄に当たる」ことを理由に数字に関して何も答弁していない(これは創価学会に限らない話である)。また、秋谷元会長が国会で財務の金額を聞かれた際も、金額に関して否定も肯定もしていない(そもそも創価学会オフィシャルの発言では無い旨を述べている)。

 

国会会議録検索システム

 

創価学会のカネに関して、信頼できる数字を公的情報に求める困難さが示されていると思う。

 

 それでも何かないかと足りないお頭を捻らせたところ、海外組織ならば情報があるのではないかと思いついた。調べたところ、とりあえずシンガポール創価学会が会計報告を公開していた。以下、該当ページである。

 

SGS Annual Report 2021 (include Financial Statements) - Soka Gakkai Singapore

 

PDFには2021年のIncome(収入)が記載されている。年間の全収入が11,599,868シンガポールドル(S$)、その内Members' contributions(会員からの寄付=財務)が6,990,389S$となっている。日本円に換算すると(1S$は大体100円)、年間収入が約11億6千万円、その内財務が約7億円。現金及び銀行預金残高(cash and bank balance)が32,007,199S$で32億円。定期預金(fixed deposit with financial institutions)が55,273,152S$で55億円。資産合計(Total assets)が122,789,686S$で約123億円。内訳は、固定資産(Non-current assets)が34,825,142S$で約35億円、流動資産(Current assets)が87,964,544S$で約88億円となっている。

 

 SGIのHPによると、シンガポール創価学会の会員数は3万5千人とのことだ。

Singapore Soka Association—Promoting Harmonious Coexistence in the Lion City | Soka Gakkai (global)

 

日本の創価学会員の人数を350万人と想定するとシンガポール創価学会の会員数の丁度100倍となる。

 

創価学会の会員数について(圧倒的な少子化) - 狂気従容

創価学会の会員数について(統計データによる) - 狂気従容

 

単純に会員数=資産力と仮定して100倍すると、日本の創価学会の年間収入および資産は、以下のように推計できる。

 

年間収入:1100億円(その内財務が700億円)

現金および銀行預金残高:3200億円

定期預金:5500億円

資産合計:1兆2300億円(固定資産3500億円、流動資産8800億円)

 

 実際には、日本とシンガポールそれぞれの会員がどれだけ財務に熱心であるか、両国の経済レベルおよび物価(地価)、税制の違い等(日本とシンガポールで資産の定義が違うかもしれない)、考慮すべき項目が幾つもあると思う。しかしながら、それなりの金額が算出されたと思う。

 

 会館施設の規模および数から考えて、日本創価学会の固定資産は、シンガポールの100倍では済まないのではないかと思う。路線価から試算してみると、広宣流布大誓堂の土地だけで、40億円となる(820,000円/m2✖4,900m2)。

 

令和4年分 財産評価基準書 21032 - 路線価図|国税庁

 

太閤園の購入に300億円という報道が一部であったが、固定資産3500億円という推定は大分下方に外れている気がする。

 

 財務金額に関してはどうだろうか。日本の学会員の方が海外メンバーよりも財務に熱心だろうと私は考えている。シンガポール創価学会からの推定値では年間700億円であるが、1000億円を超えるのではないかと推測する。書籍や聖教新聞の売上があるので、収入に関しても100倍より多くなると予測する。全体的に上記推定値はかなり低い見積もりかもしれない。冒頭で触れた熊代氏は、

 

「我々が内々にいろいろ聞いたところでは、創価学会さんは不動産資産九兆円、流動資産一兆円というような堂々たるお力を持っておられるというようなことでございます」

 

と発言している。単純な計算であるが、流動資産8800億円という推定値は悪くないようにも思う(実際にはより複雑な要素が絡むだろう)。他地域の創価学会が会計報告書を公表しているならば、比較検討できるかもしれない。

 

 いずれにせよ、年間財務1000億円以上という数字は、まんざら過大な数字というわけでも無さそうである。