狂気従容

軍事、歴史、宗教などを語ります。

長井秀和氏の西東京市議会議員選挙当選について

 長井秀和氏が西東京市議会議員選挙において当選した。3,482票獲得でトップ当選の結果だった。2位当選との差は500票近い。ダントツの1位当選と言っていいだろう。長井氏は西東京市において、1年以上も辻立ちを継続していたらしい。元々の知名度と相まって、票を積み上げる原動力となったのだろう。

 

 先に断っておくと、私は長井氏を特に支持しているわけではない。長井氏の舞い方は、データ重視の私とは肌が合わないだろうなとは思うものの、肯定も否定も特にない。ただ、氏が創価学会にどの様な影響を与えるか興味がある。

 

 長井氏の当選について、様々なコメント・指摘がされているー選挙期間中の創価学会からの提訴は斬新ではあったー。氏の今後の活動や影響力について、いくつか記述してみたいと思う。

 

1. 市議会議員の影響力・活動範囲は市内に留まらない

 市議会議員の影響力は市内に限定されない。特に、長井氏のような著名人であれば、SNSでの情報発信含め、市町村の境を跨いで波紋は広まるだろう。

 

 市会議員の仕事として市外に視察に行くこともあれば、都道県議会議員(長井氏の場合は主に都議会議員)と協議をする機会もあるだろう(防災関係がわかりやすい例)。他市町村区の議員と広域的に連携することも可能だ。宗教問題をテーマに掲げ、自治体を横断しての連携も視野に入れているかもしれない。まずは西東京市の内側で活動していくだろうけれども、長井氏にはー氏の知名度を抜きにしてもー市外に干渉する能力機会がある。

 

2.市議会のテーマは市政に限定されない

 原子力平和の街とか平和宣言の街とか、見かけたことはないだろうか。最近では、防衛関係で地方議会レベルでの反意がニュースになっている。市議会だからと言って、テーマが市内に限定されるわけではない。基本は市内の話が中心にはなるものの、宗教問題が議題になる可能性はある(議会での質疑にテーマ上の制約は無いと思うが……どうだろう)。

 

3.議員の活動は議会に限定されない

 おそらく、多くの方が誤認識していると思う。市議会議員の仕事場は、議場に限定されているわけではない。行政組織(市役所)に直接赴いて、協議調整することが可能だ。どの程度まで可能かは各自治体の条例や慣例に依存するだろうけれど、市議会議員が市役所の窓口に出向くことはそれなりにある。小さな要望程度ならば、担当者に直接話をするかもしれない。

 

 公明党共産党所属の地方議員の方は、フットワーク軽く細かい課題までよく対応することで有名だが(もちろん他党議員や無所属の方にもそういう方はいるでしょう)、いちいち議会の採決で結果を出しているわけではない。自分から行政組織に出かけて、協議や意見交換を重ねて動かしている。

 

 そもそも、地方議会も国会と同じく会期が存在する。年がら年中、議会がオープンになっているわけではない。議場で鋭い質問をするよりも、議会が閉会している時にどれだけ地域を巡るかが、その人の地道な評価につながるだろう。

 

 議会で多数派に成れないから影響力は限定的という認識は誤りである。条例制定や予算案の採決において数を行使できないとしても、政治家としてのポテンシャルは戦い方次第で変化する。

 

4.組織が無くとも声は響く

 力強い後援組織が無くとも、トップ当選した議員の存在感は大きい。議会の議長となる議員も行政長(長井氏の場合は市長)も、その後ろにいる有権者を見ている。長井氏の場合は発信力もある。ぞんざいな扱いをすれば、思わぬ反撃を喰らうかもしれない。特に、行政長の場合は選挙となれば長井氏を支持した人物も潜在的な得票源だ。真っ向勝負で対決姿勢を示すのでなければ、協議や融和の余地を残すだろう。 

 

 西東京市長の政策も為人も存じていないけれども、無難な戦術をとるならば公明党にも配慮しつつ、長井氏とも付き合っていく必要がある。前述したように、市長が長井氏との対決姿勢を明確にするならば別であるが、それは長井氏に「行政組織との対決」を促すだろう。

 

 例えばシチュエーションはこうだ。宗教2世3世として育ったが故に苦しんでいる西東京市民がいたとする。市長が長井氏との対話を拒否すれば、長井氏はそういう人物をつれて直接市役所を訪れ、担当課を問いただすかもしれない。生活苦ならば社会福祉関係、対象が子供ならば教育委員会。その様子を動画なりSNSで発信していけば、行政サイドも対応を迫られるだろう。お互いに計算ができる人物ならばいきなりそういう行動には移らないと思うが、いざとなれば苛烈な戦い方も選択できるということだ。長井氏の後ろに強力な支援団体はいないかもしれないが、3,482人の市民からの投票と数万人のフォロワーがいる。

 

 思いついたことを、一般論として指摘できることを中心に書かせてもらった。

 

創価学会はどう反応するか

 以下は、創価学会サイドの反応についての感想等である。完全に私見であることを了承して、読んで頂きたい。

 

 長井氏に対して、創価学会は提訴というカードを切った。創価学会的には、話題にならないことが一番被害を少なくするだろうからー裁判で長井氏や週刊誌に勝訴しても一般人の創価学会評は高くならないー、話題が冷めるまで放置する可能性もあると私は見ていた。実際に警察が捜査に動いているのか現時点(R4年12月28日)では不明であるが(私は知らない)、創価学会は対決姿勢を示した。長井氏の影響力を無視できないと思ったのか、梁島全国男子部長自ら、創価学会が長井氏を提訴したことをTwitterに投稿している。

 

 来年には統一地方選挙があるので、問題が尾を引くのを嫌ったのかもしれない。上記提訴の前に、週刊誌記事に対する抗議も行っていた。

 

 私は、長井氏になびくようなタイプは元々創価学会のリソースとして期待値が低いと推測しているので、長井氏による内部票の低下を創価学会はそこまで恐れてはいないと思う。気にするとすれば、外への影響だ。ただ地方選は全体的に投票率が低く、無党派層への長井氏の影響力がそこまで選挙に影響するかと言われれば、創価学会の見積もりは高くないだろう。衆議院が解散すれば別の話である。内部票と活動家への影響という点では、立場的にも主張的にも、正木伸城氏の方がポテンシャルがありそうである。

 

★おまけ

 もし私が何らかのシチュエーションにおいて、発信力のある街頭で魅せるタイプの分かりやすい敵対者と、地味な発言ながらも時間をかけて同調者を呼び込みそうな改革派の運動家と、その両方を相手にしなければならいとしたら、まず両名を”同様の行動をとる同様の敵”と周囲が認識するようレッテルを張る。かつての紛争をナラティブとして利用できるなら利用する。「私の敵はいつも同じパターンである云々」と物語の形成に努めるだろう。

 

 前者には外からも認識しやすいパフォーマンス染みた対応をしつつ、後者には行間や比喩で牽制しつつ閉じた場所でジメジメとした合意形成を図り、親縁者や友人を用いたからめ手をひっそりと講じ対処するだろう。外から攻めてくる人物と内側から削り取ってきそうな人物と、両者の行動が相乗効果となって現れないよう注意しつつ、外には分かりやすい手立てを、内には見えざる防壁を築くように努める。どの道損切の戦いになるだろうから、主眼はマイナス分の減少におく。必要ならば、本来的には敵対しそうな人物の論評を切り貼りして引用するだろう。些末な相違を指摘することで潜在的な敵対者達の分離分断を狙えるかもしれない。

 

 泥仕合をけしかけて消耗戦に持ち込めば、私の方が体力があるならば有利にことを運べるだろう。破壊ではなく改革を掲げる者には、クリーンなイメージを損なうようなレッテル張りがより有効打になるだろう。決まったタイミングで一斉に黙ったり、合図と共に一斉に吠えてくれるような子飼いの犬達、何らかの指摘に対して「自己紹介ですか?」と煽れるような尖兵がいればなお好都合だ。まぁそれは組織にしかできない戦い方だ。独り身のSalemには不可能である。